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イニシャルコストとランニングコスト

家を建てる時には、皆さん周知のとおり、お金がかかります。

また、さらに高断熱高気密で災害に負けない高性能な家となると、さらにお金がかかります。

性能をあげた家を建てれば、良い家、快適な家が手に入ることはわかっていても、そこまでお金をかけなくても

いいかな・・・と妥協してしまうこともあるでしょう。予算は無限には出せません。

その限られた予算の中でどこまで目に見えない「性能」にお金をかけるのかは、私たちも頭を悩ませるお客様を

多々見受けます。実際、私もその立場に立ったのなら、どこを妥協するのか、頭を悩ませると思います。

そんなときは、建築費用を「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」に分けて考えます。

イニシャルコストとは、家を建てる時にかかる費用のことです。

実際にかかる建築費や、ローンの保証料、登記費用などといった諸経費になります。

ランニングコストはその後、住み始めてからかかる費用のことです。

毎月支払う光熱費や経年劣化等によって発生するメンテナンスにかかる費用などがそれに該当します。

そしてイニシャルコストとランニングコストを合わせた費用のことを「生涯コスト」と呼びます。

せっかく建てた家に長く住み続けたいと思うならば、この「生涯コスト」がどのくらいかかるのかということも

とても重要なポイントです。

「できるだけローコストで建てたい」と建築費を下げることは簡単です。面積を小さくしたり、

間取りや形をシンプルにして、使用する材料や設備のスペックを落とすなど、建築費の削減方法は様々ですが、

この時に大切なのは、30年後、40年後までのランニングコストをイメージしてみることです。

住み続ける間に性能が維持できるのか?経年変化がどんなものか?

なぜなら、光熱費やメンテナンス費用は住み始めてからでは、削減しようと思っても簡単には下がらないからです。

 

こちらは住宅の省エネ性能別の光熱費の比較になります。(国土交通省HP資料より一部抜粋)

このように、建築時の初期費用を下げたいがために、光熱費(断熱性能)やメンテナンス費(耐久性)に係る部分を

削減してしまうと、ランニングコストが高くなり、長く住めば住むほどお金のかかる家になってしまいます。

その中でも光熱費に特化して…ですが、私が住まい探しをしたときのお話をします。

私は設計の仕事をしているので、いつかは自分の家は自分で設計したかったのですが、

当時住んでいたアパートの事情と、実際にローンを支払う主人の意向もあり、

中古物件を探していました。割と短期間で探す必要があり、あまりのんびりできなかったのですが、

住まう地域を優先に見つけた中古物件がありました。

しかし、どうしても駐車場を3台確保することができず、そこは泣く泣く諦めました。

それから、大手ローコスト系ハウスメーカーの新築建売物件を含め、5軒以上の物件を見て廻り、

結果、とある建売住宅を購入しました。

決め手は、不動産屋さんに見せて頂いた、工事中の管理写真があったこと。

工事管理写真により、断熱材がしっかり施工されている確認が取れたこと、

もちろん内装の仕上も好みだったこともありますが、窓が断熱性能の高い、

樹脂サッシだったことが決め手になりました。

主人は太陽光発電がたくさん搭載されていたことが大きかったようですが、断熱性能が高いおかげで、

エアコン一つでとても快適に過ごせています。

犬を2匹飼っているので、夏季と冬季は特にエアコンがかけっぱなしになるのですが、

それでも光熱費も狭いアパートより少しかかるくらいだし、何より極端な温度設定をしなくても

省エネ温度で快適に過ごせるし、太陽光発電の売電費用も少しですが入ります。

最初に気になっていた中古物件は、金属製サッシで、どんな断熱材がどんな風に施工されているのかは

もちろん分かりません。それに実は、日当たりも気になっていたので、

いまとなれば、現在の住まいでよかったと思っています。

その代わり、洗面台は好みでないピンク色の扉でしたし、お風呂も白い浴槽がよかったけれど、

濃いグレーの浴槽でした。おまけにキッチンの背面収納もなく、入居時に設置することになりましたが。

 

お風呂の浴槽はともかく、洗面台の扉は貼るシートで好みの色に変えることができます。

見えない部分こそ、後で変更することが難しく、さらに住み始めてからのランニングコストを

下げる要因になることが多いです。

目に見える部分であれば、あとからでもリフォームがしやすいことが多いです。

新築時は特に、妥協せず、見えない「性能」部分にこそコストをかけてみませんか?

文章:山内麻美

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