前回は、「リノベーションでも、新築と変わらない性能にできるのか?」という、性能面についてお話ししました。
今回は、もうひとつ気になる「お金」の話です。
前回の記事でも触れましたが、新築住宅の建築費は、この10年で大きく上昇しています。
では、リノベーションはどうなのでしょうか?
当然ですが、リノベーションも新築と同じように、資材価格や人件費の高騰の影響を受けています。
「リノベーションなら、とにかく安くできる」というわけではありません。
では、同じくらいの大きさ、同じくらいの性能の家をつくるとしたら、新築とリノベーションでは、実際にどのくらい費用が違うのでしょうか?
今回は、エフ・ベースで実際にリノベーションさせていただいたお客様のお住まいを例に、比較してみたいと思います。
実際のリノベーションで比較してみます
今回の建物はこちらです。
リノベーション完成:2024年(令和6年・築38年)
構造:木造在来工法2階建て
延べ面積:105.99㎡(約32坪)
1986年築ですので、いわゆる「新耐震基準」以降の住宅です。
ただし、「新耐震だから何もしなくても安心」というわけではありません。
2000年以前の木造住宅については、現在とは接合部などの考え方が異なる部分もあるため、建物の状態を確認したうえで、必要な耐震補強を行うことが大切です。
今回も、既存の建物を調査し、必要な部分にしっかり手を入れています。
これは、内装をきれいにするだけのリフォームではありません。
床や壁を解体して構造体を確認し、耐震・断熱性能まで向上させる「性能向上リノベーション」です。
主な工事内容
- 屋根:既存の日本瓦をそのまま活用
- 小屋裏:グラスウール吹込み300mm
- 外壁:ガルバリウム鋼板+一部杉板張り
- 壁:スケルトン解体後、金物補強・耐力面材施工
- 床:全面撤去し、1・2階とも剛床施工
- 断熱:新築と同等レベルの断熱・気密工事
- 基礎:一部新設+既存基礎の補強
性能についても、
建設住宅性能評価「耐震等級3」取得申請中
断熱性能:UA値0.35
HEAT20 G2
断熱等性能等級6
というところまで性能を高めています。
つまり、単に「古い家をきれいにした」のではなく、
築38年の住宅を、これから先も安心して快適に暮らせる住まいへつくり直した、というリノベーションです。
では、いくらかかったのか?
この住宅の場合、
リノベーション工事 3,300万円(税別)
合計 4,600万円
でした。
では、同じくらいの規模・性能の住宅を、土地から購入して新築すると仮定してみます。
建物 32坪 × 120万円 = 3,840万円(税別)
屋外給排水・電気工事 200万円
外構工事 200万円
合計 5,740万円
単純比較すると、
5,740万円 − 4,600万円 = 1,140万円
今回のケースでは、リノベーションの方が約20%費用を抑えられたことになります。
「リノベーションなら20%安い」というわけではありません
ここは、とても大切なところです。
今回の住宅では、日本瓦の屋根はそのまま活用することができました。
基礎についても、すべてを造り直すのではなく、調査したうえで必要な部分を補強しています。
反対に、
- 屋根をすべて葺き替える
- 基礎を全面的に補強する
- 構造体の劣化が大きい
- 給排水などのインフラまで大幅な更新が必要
といった住宅では、新築に近い費用になることもあります。
だからこそ、リノベーションでは、
「この家の何を残し、どこにお金をかけるのか?」
という見極めが、とても重要になります。
既存住宅をきちんと調査して、使えるものは使う。
そして、耐震や断熱など、これから長く暮らしていくために必要なところには、しっかりお金をかける。
この判断こそが、リノベーションの大切なポイントだと思っています。
「この家なら、いくらかかる?」を知る
参考までに、私も参加している「一般社団法人 未来へ繋ぐ工務店の会」では、リノベーションにかかる費用を簡易的に判定できる「リノベトリアージ」というツールを公開しています。
私の感覚では、実際の見積りよりやや高めに出る印象がありますが、
「この家をリノベーションすると、どのくらいかかりそうか?」
を考える最初の目安になります。
エフ・ベースにご相談いただければ、物件資料や図面をもとにこの診断も一緒に行います。
約20%安くできる可能性を、どう考えるか?

私は、十分に選択する価値があると思っています。
もちろん、「安いからリノベーション」というだけではありません。
今ある家を生かすこと。
そこで暮らしてきた時間や記憶をつなぐこと。
今ある街並みを残すこと。
そして、これから人口や世帯数が減っていく日本で、すでにある住宅を次の世代へつないでいくこと。
国の住宅政策も、新しく建てるだけではなく、既存住宅をきちんと改修し、長く使っていく方向へ動いています。
そのため、現在は性能向上リノベーションに利用できる補助制度も用意されています。
2026年度、リノベーションに使える主な補助制度
代表的なのが、国の「住宅省エネ2026キャンペーン」です。
① みらいエコ住宅2026事業
既存住宅の省エネリフォームを支援する制度です。
開口部や床・壁・天井などの断熱改修、省エネ設備など、一定の条件を満たすリフォームが対象になります。
住宅の建築時期や工事内容によって補助上限は異なりますが、最大100万円/戸の補助が用意されています。
② 先進的窓リノベ2026事業
住宅の中でも、熱の出入りが大きいのが「窓」です。
高性能な窓への交換や内窓の設置などを支援する制度で、住宅の場合、最大100万円/戸が補助されます。
③ 給湯省エネ2026事業
エコキュートなど、高効率給湯器への交換を支援する制度です。
リノベーションのタイミングで給湯設備も更新する場合には、こうした制度も検討できます。
ただし、補助金は対象となる工事や製品、申請時期などに細かな条件があります。
また、予算上限に達すると受付が終了します。
「補助金があるから工事をする」のではなく、必要な性能向上工事を考え、その中で使える制度を上手に利用する。
という考え方が良いと思います。
では、お金はどうやって工面する?
費用感が分かってくると、次に気になるのは、
「そのお金をどうやって用意するの?」
ということだと思います。
特に、「中古住宅を購入して、そのままリノベーションする」という場合、物件購入費と工事費の両方を考える必要があります。
その選択肢のひとつが、住宅金融支援機構の「フラット35リノベ」です。
中古住宅を購入し、一定の要件を満たすリフォームを行うことで、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。
現在は、
金利Bプラン:当初5年間 年▲0.5%
という金利引下げがあります。
フラット35は全期間固定金利ですので、借入時に返済終了までの金利と返済額が確定するのも大きな特徴です。
これから金利がどう動いていくのか分からない中で、
「将来の返済額が分かっている」
という安心感は、ひとつのメリットだと思います。
また、地域は限られますが、JAさんにもリノベーションに利用できる住宅ローン商品があります。
変動金利の商品でも、商品によっては上限金利が設定されているタイプがあり、弊社のお客様でも利用されています。
住宅ローンは、「今の金利が何%か」だけを見るのではなく、
総返済額はいくらになるのか?
金利が上がったらどうなるのか?
無理なく返し続けられる金額はいくらなのか?
まで含めて考えることが大切です。
リノベーションは「安くするため」だけの選択ではない
いかがでしたか?
今回は一例ではありますが、実際に行ったフルスケルトンの性能向上リノベーションをもとに、新築との費用差を比較してみました。
今回のケースでは、築38年の住宅を耐震・断熱ともに大きく性能向上させながら、土地から購入して新築する場合と比較して、約20%費用を抑えることができました。
さらに、補助金や住宅ローンなどの制度もうまく活用すれば、リノベーションは十分に現実的な選択肢になります。
ただし、すべての中古住宅がリノベーションに向いているわけではありません。
大切なのは、
「物件を買ってから、どう直そう?」ではなく、
「この家なら、どこまで直せて、全部でいくらになる?」を購入前に考えること。
だと思っています。
建物の状態を見極め、物件価格、工事費、補助金、住宅ローンまで含めて考える。
そこまでできて初めて、新築とリノベーションを同じ土俵で比較できるようになります。
ここまでで、
「性能のことも、お金のことも、だいたい分かってきた。」
となると、次に気になるのは、
「でも、リノベーションで本当に自分の思い描く暮らしができるの?」
ということではないでしょうか。
古い家だから、間取りに制約があるのでは?やりたいことを我慢しなければならないのでは?新築の方が自由なのでは?
次回は、
③「リノベーションで、思い描く暮らしはできるのか?」
について、実際の事例も交えながらお話ししたいと思います。


