こんにちは。エフ・ベース代表の丸山です。
家づくりを考えている方とお話ししていると、リノベーションについて、大きく3つの不安を感じている方が多いように思います。
1.性能のこと
中古住宅で、耐震性や断熱性は本当に大丈夫なのか?
2.お金のこと
実際にいくらかかるのか? 住宅ローンは利用できるのか? 国や自治体の補助金は使えるのか?
3.どこまでできるのか?
中古住宅でも、自分たちが思い描く暮らしを実現できるのか? リノベーションだからこその制約はないのか?
この3つについて、これから順番にお話ししてみたいと思います。
第1回は、リノベーションで最も気になるであろう「性能」についてです。
新築住宅が、本当に高くなっています
「最近、家が高くなった」
これは皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。実際、住宅の建築費はここ10年ほどで大きく上昇しています。
一般財団法人 建設物価調査会が公表している「建設物価 建築費指数」を見ると、東京の木造住宅の工事原価指数は、2015年平均を100とした場合、2026年7月には152.3となっています。
つまり、同じ基準で比較すると、木造住宅の建築工事原価は、この10年ほどでおよそ1.5倍の水準まで上昇しているということです。
もちろん、「木材が全部1.5倍になった」という意味ではありません。
住宅には、木材、コンクリート、鉄、断熱材、サッシ、住宅設備など、たくさんの材料が使われています。
それに加えて、職人さんの人件費や運送費なども建築費に影響します。
こうしたさまざまなコストが積み重なった結果として、住宅を建てるために必要な費用そのものが大きく上昇しているのです。
しかも、2026年7月の木造住宅の工事原価指数は前月からさらに0.5%上昇しています。
「数年前と同じ予算では、同じ家を建てるのが難しくなった」
私たちが日々見積りをしていて感じるこの感覚は、統計にも表れています。
出典:一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建築費指数®」(東京・住宅[木造]、2015年平均=100、2026年7月分)
エフ・ベースでも、5,000万円前後の新築が増えてきました
エフ・ベースでも、直近の新築住宅では、建物本体で坪120万円程度からというケースが増えてきました。
30坪程度の住宅でも、建物本体だけでは家は完成しません。
外部給排水工事、外構工事、太陽光発電などまで含めていくと、総額5,000万円前後になる計画も増えています。
さらに土地から購入するとなれば、6,000万円〜7,000万円という計画になることもあります。
これはエフ・ベースだけの話ではありません。
国土交通省の「令和7年度住宅市場動向調査」では、注文住宅の住宅購入資金の平均は7,646万円となっています。
ただし、この数字には土地購入資金を含むケースなどもあるため、「建物だけで7,646万円」という意味ではありません。
それでも、住宅取得に必要な金額そのものが非常に大きくなっていることは間違いありません。
10年ほど前なら「土地も含めて4,000万円〜5,000万円くらいで」とお話ししていたものが、今ではそこから1,000万円、場合によっては2,000万円近く上がっている。
「家を建てるということが、ずいぶん大きな買い物になったな」
私たち住宅をつくる側から見ても、そう感じています。
出典:国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」
家のために、暮らしを我慢してほしくない
もちろん、これから賃金も上がっていくかもしれません。
それでも、5,000万円、6,000万円、7,000万円という金額は、家族にとって非常に大きな負担です。
私は、住まいというものは、「家族の日々の暮らしを豊かにするためのもの」だと思っています。
- 住宅ローンを払うために旅行を我慢する。
- 子どもにかけたいお金を我慢する。
- 趣味を我慢する。
- 家族との時間まで犠牲にして働く。
それでは、何のために家を建てたのか分からなくなってしまいます。
住まいそのものが、暮らしの足かせになってはいけない。
これは、家づくりに携わる者として、とても大切にしている考え方です。
では、安い家を建てればいいのか?

そこで、「だったら、もっと安い家を建てればいいのでは?」という考え方もあります。ただ、これも少し違うと思っています。
- 耐久性が低い。
- 耐震性が十分ではない。
- 断熱性が低い。
- 長く使うことを考えていない。
価格だけを優先して、そんな家をこれから新しく建てることには疑問があります。
日本では、すでに空き家が大きな社会問題になっています。
これから必要なのは、30年、40年使って終わる家ではなく、自分たちが豊かに、快適に暮らし、その先は子どもたちや、場合によってはまったく別の誰かが引き継いで使える家ではないでしょうか。
最初に多少お金がかかったとしても、光熱費などのランニングコストを抑えながら、長く使うことができる。
そして、自分たちが使わなくなったときにも住宅としての価値が残っていれば、売却したり、貸したりする選択肢も生まれます。
「今、いくらで建てられるか」だけではなく、20年後、30年後、この家にどんな価値が残っているのか。
そこまで考えて、家づくりをする時代になってきたのだと思います。
そこで注目したい「中古住宅+リノベーション」
とはいえ、日々の暮らしに無理が生じるほど、住宅にお金をかけるわけにもいきません。
そこで、私たちが今とても可能性を感じているのが、「すでにある住宅を購入して、リノベーションして暮らす」という選択肢です。
実際、住宅金融支援機構の2024年度【フラット35】利用者調査では、中古戸建と中古マンションを合わせた利用割合は34.8%となり、前年度から7.4ポイント増えています。
もちろん、これは【フラット35】利用者に限ったデータなので、日本全体の住宅取得の割合という意味ではありません。
それでも、中古住宅を住まいの選択肢として考える人が増えていることを示す一つのデータだと思います。
出典:住宅金融支援機構「2024年度【フラット35】利用者調査」
でも、中古住宅って本当に大丈夫?
中古住宅と言われると、やはり気になることがあります。
- 「地震が来ても大丈夫なの?」
- 「冬、寒くないの?」
- 「夏は暑くない?」
当然ですよね。築30年、40年、50年の家なら、つくられた時代の基準も、住宅に対する考え方も現在とは違います。
そこで出てくるのが、「性能向上リノベーション」という考え方です。
見た目をきれいにするだけではありません
一般的な「リフォーム」という言葉からは、キッチンを新しくする、壁紙を張り替える、お風呂を交換するといった工事を想像する方も多いと思います。
もちろん、それも大切なリフォームです。
しかし、私たちが取り組んでいる「性能向上リノベーション」は、もう少し踏み込みます。
- 耐震性能を上げる。
- 断熱性能を上げる。
- 劣化している部分を直す。
- これからの暮らしに合わせて間取りをつくり直す。
建物の状態や条件にもよりますが、きちんと調査・設計・施工を行えば、中古住宅でも、現在の新築住宅と同等レベルの耐震・断熱性能を目指すことは十分可能です。
これが性能向上リノベーションです。
まず一番大切な「耐震性能」

中古住宅を考えるとき、最初に確認したいのは耐震性能です。日本では、いつどこで大きな地震が起きても不思議ではありません。
そして、これからの住宅では、「地震から命を守る」ことはもちろん、できるだけ被害を小さくし、「地震の後にも住み続けられる可能性を高める」ところまで考えておきたいと思っています。
建築基準法で求められている耐震性能は、あくまで最低限守らなければならない基準です。
住宅性能表示制度でいう「耐震等級1」は、建築基準法で想定する極めてまれに発生する大地震に対して、建物が倒壊・崩壊しないことを求める水準です。
つまり、「大地震が来ても建物がまったく傷まない」という基準ではありません。
耐震等級3相当を目指します
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級です。耐震等級1で想定する地震力の1.5倍に対する性能を考えます。
ただし、耐震等級3だからといって、「どんな地震でも壊れない」「地震の後も必ず住み続けられる」という意味ではありません。
それでも、大きな地震が起きたときにできるだけ被害を小さくして、その後もその家を使い続けられる可能性を高める。
私たちは、そこまで考えて耐震改修を行いたいと思っています。
出典:国土交通省「住宅性能表示制度」
古い家を、どうやって強くするのか?
「新築なら分かるけれど、古い家をそんなに強くできるの?」と思いますよね。
建物の状態によりますが、適切な調査と設計を行えば、大きく耐震性能を向上させることができます。
- 建物の重さはどのくらいか。
- 耐力壁がどこにあるのか。
- 必要な壁量が確保できているか。
- 壁の配置バランスはどうか。
- 柱や梁にどのような力がかかるのか。
こうしたことを検討したうえで、不足している耐力壁を追加したり、柱や梁を補強したり、接合部を金物で補強したりします。
そして、忘れてはいけないのが基礎です。
いくら建物の上側を強くしても、その力を受け止める基礎が弱ければ、十分な耐震性能を発揮できません。
特に1981年(昭和56年)の新耐震基準以前につくられた住宅などでは、現在とは基礎の考え方や仕様が大きく異なる建物もあります。
そのため、まず現在の基礎の状態を調査します。
必要であれば、既存の基礎に新しい鉄筋コンクリートの基礎を沿わせる「添え基礎」などの補強を行うこともあります。

実は、新築よりリノベーションの方が難しい

性能向上リノベーションは、「新築より簡単な工事」ではありません。むしろ私は、新築より難しいと思っています。
新築なら、何もないところから設計図や構造計算に沿ってつくっていくことができます。
しかしリノベーションでは、「壁を剥がしてみたら想定と違った」「残っている図面と実際の構造が違う」「柱や土台が傷んでいた」ということがあります。
既存の建物を調査し、現場で確認しながら、構造を読み解き、それを生かしながら補強していく。
だからこそ、性能向上リノベーションを依頼するときには、「新築を建てられる会社かどうか」だけではなく、「既存住宅の耐震診断や性能向上改修をどれだけ経験しているか」も確認していただきたいと思います。
計算しただけで終わらせない
私たちは耐震改修をするとき、計算だけで終わらせないようにしています。
その一つとして、施工前と施工後に微動探査(常時微動測定)を行うことがあります。
実は建物は、風や交通振動、地面から伝わる振動などによって、人間には感じられないほど小さく常に揺れています。
これを「常時微動」といいます。
この微細な揺れをセンサーで測定すると、その建物が持っている固有の揺れ方、つまり「どんな周期で揺れやすい建物なのか」といった振動特性を知ることができます。
そこで、リノベーションの施工前と施工後を測定して、「耐震改修によって、建物の揺れ方がどう変わったのか」を確認する材料にしています。
もちろん、微動探査だけで「耐震等級3」を証明できるわけではありません。
構造計算や耐震診断を基本としながら、実際の建物がどのように変化したのかを見るための一つの手段として活用しています。
計算上だけでなく、「実際の建物はどうなのか?」そこまで確認していくことが大切だと考えています。
もう一つ大切なのが「断熱性能」
耐震性能が「安心」に関わるものだとすれば、断熱性能は毎日の「快適さ」に直結します。
古い住宅を解体してみると、断熱材が途中で途切れている、隙間ができている、断熱材が十分に入っていない、という住宅もあります。
もちろん、築年数だけで一概には言えません。
ただ、現在ほど断熱性能や施工精度が重視されていなかった時代につくられた住宅が多いのも事実です。
だからこそ、性能向上リノベーションでは、耐震改修と同時に断熱性能も大きく引き上げていきます。
断熱改修は、まず「窓」から考える
断熱改修で特に重要なのが窓などの開口部です。大きく分けると3つの方法があります。
① 内窓を付ける
既存の窓の室内側に、もう一つ窓を取り付ける方法です。
今ある外壁や内装を大きく壊さず施工できるため、比較的取り入れやすい方法です。
二重窓になることで、断熱性だけでなく防音性の向上も期待できます。
② カバー工法
既存サッシの枠を残し、その上から新しい高性能なサッシ枠を取り付ける方法です。
こちらも外壁を大きく壊さず施工できることがメリットです。
③ 窓そのものを交換する
耐震改修や壁の断熱工事で内外装を剥がすのであれば、私たちはこの方法をおすすめすることが多いです。
現在の高断熱サッシに交換できるだけでなく、「ここに大きな窓が欲しい」「西日は入れたくない」「庭とのつながりをつくりたい」といったように、暮らしに合わせて窓の位置そのものを再設計できるからです。
これは、性能向上リノベーションの大きなメリットだと思います。

次は「屋根・天井」
屋根・天井部分の断熱も非常に重要です。
特に夏は、屋根が強い日射を受けます。
屋根を葺き替えるのであれば、屋根の外側で断熱する方法もあります。
既存の屋根を生かす場合には、小屋裏側から断熱材を吹き込む方法などがあります。

古い木造住宅の小屋裏は、梁や筋交いなどが入り組んでいることが多いため、断熱材を隙間なく施工することが非常に重要です。
吹込みグラスウール、セルロースファイバー、ウッドファイバーなど、形状に追従しやすい材料を使うことで、複雑な部分にも断熱層をつくりやすくなります。
どんな断熱材を使うかも大切ですが、「隙間なく、きちんと施工されているか」が非常に重要です。
壁と床も、新築と同じようにつくり直す

フルリノベーションの場合、耐震改修や劣化部分の確認のため、床や内壁を一度撤去することがあります。
そこまで工事をするのであれば、壁や床の断熱も基本的には新築と同じように考えることができます。
つまり、「中古住宅だから断熱性能には限界がある」とは限りません。
きちんと設計して施工すれば、非常に高い断熱性能まで引き上げることができます。
目指したいのは「断熱等級6」以上
私たちが性能向上リノベーションで一つの目安にしているのが、断熱等性能等級6以上。
できればHEAT20のG2〜G3レベルです。
国は2022年に、より高い断熱性能を示す「断熱等性能等級6・7」を新設しました。
静岡県の多くの地域が該当する6地域の場合、UA値の基準は次のとおりです。
断熱等級7:UA値 0.26以下
UA値は、家全体からどれくらい熱が逃げやすいかを示す数字で、数字が小さいほど断熱性能が高いと考えてください。
出典:国土交通省「住宅性能表示制度における断熱等性能等級6、7の住宅について」
ただし、私はUA値の数字だけを競えばいいとは思っていません。大切なのは、実際にその家でどう暮らせるか、です。
- 冬の朝、布団から出るのがつらくない。
- 部屋から廊下に出ても「寒っ」とならない。
- 脱衣室も極端に寒くない。
- 夏、2階に上がった瞬間にムッとしない。
- 大きなLDKでも、室内の温度差が小さい。
そういう毎日の暮らしをつくるための断熱性能です。
できればG3に近いところまで性能を上げたい。
実際にそのレベルの住宅に入ってみると、快適性の違いはかなり感じられると思います。
そして、断熱性能を高めることで、暖冷房に必要なエネルギーを減らすことも期待できます。
高断熱化には、もちろん工事費がかかります。
しかし私は、それを単なる「追加費用」ではなく、これから何十年も続く快適性とエネルギーコストに対する投資と考えています。
結論。中古住宅でも、高い性能を目指せます

今回、一番お伝えしたかったことはここです。
「中古住宅だから性能が低い」と、最初から諦める必要はありません。
- 建物の状態をきちんと調査する。
- 耐震計画を行う。
- 構造を補強する。
- 必要なら基礎も補強する。
- 窓を見直す。
- 屋根・壁・床をしっかり断熱する。
こうしたことを適切に行えば、築30年、40年、50年という住宅であっても、現在の新築住宅と同等レベルの耐震・断熱性能を目指すことは十分可能です。
「数値が良ければ、それでいいのか?」
耐震計算で良い数字が出た。UA値を計算したら高断熱だった。もちろん、それは大切です。
でも、最終的に知りたいのは、本当に地震に対して強くなったのか、そして、本当に暮らしていて快適なのか、ということではないでしょうか。
だからエフ・ベースでは、耐震については必要に応じて施工前・施工後の微動探査なども活用し、改修によって建物の振動特性がどう変化したのかを確認しています。
そして断熱性能については、ぜひ、実際に体感していただきたいと思っています。
エフ・ベースには、実際に古い住宅を性能向上リノベーションしたモデルハウスがあります。
図面やUA値を見ただけでは分からない、玄関に入ったときの空気、部屋から廊下へ出たときの温度差、窓際に立ったときの感じ方、冬の朝の暖かさ、夏の室内の過ごしやすさ。
これは、実際に建物に入ってみるのが一番分かります。

「古い家を直した家」というイメージで来ていただくと、おそらく、その快適さに驚いていただけると思います。
新築か、中古住宅+リノベーションか。
最初からどちらかに決める必要はありません。
大切なのは、「自分たちは、どんな暮らしをしたいのか」から住まいを考えること。
その選択肢の一つとして、「今ある住宅を生かし、性能を高めて、これから先も長く使っていく」という方法があることを、ぜひ知っていただければと思います。
次回は、「結局、いくらかかるの?」というお金の話
次回は、リノベーションを考えると必ず気になる「お金の話」をしてみたいと思います。
- 新築と比べて本当に安くなるのか。
- 中古住宅はいくらくらいで買えるのか。
- 性能向上リノベーションには、どのくらい費用がかかるのか。
- 住宅ローンは使えるのか。
- 国や自治体の補助金にはどんなものがあるのか。
できるだけ具体的な数字を使ってお話ししたいと思います。ぜひ、次回も読んでみてください。
参考・出典
- 一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建築費指数®」2026年7月分
- 国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」
- 国土交通省「住宅性能表示制度」
- 国土交通省「住宅性能表示制度における断熱等性能等級6、7の住宅について」
- 住宅金融支援機構「2024年度【フラット35】利用者調査」
※エフ・ベースの新築価格等については、当社の直近の施工実績・計画事例をもとにした目安です。
建物の規模、敷地条件、仕様等によって異なります。


