エアコンの上手な使い方と建築的工夫
9月に入り、日の入りがだんだん早くなってきました。しかし、まだまだ暑さは続きそうです。
近年、夏の猛暑日が増え、連日のように熱中症による救急搬送のニュースを耳にします。
実際、2018年の熱中症による救急搬送者数は9万人以上にのぼりました。
(4月30日から8月30日:消防庁調べ)
そのうち、住居内で倒れた人は40%近く。
快適な住まいづくりには冬のヒートショックだけでなく、夏の熱中症対策も無視できません。
エアコンを上手に使う
室内にいて熱中症で倒れる高齢者のなかには「冷房をつけっぱなしにするのは、電気代がもったいない」とエアコンをつけずに窓を開け、暑さを我慢して過ごしている人がいまだに少なくありません。
春や秋の中間期であれば、家の中を風が通り抜けて心地よいですが、夏の高温多湿な風を取り込んでも、蒸し暑さは緩和されるどころか、湿度が高いと体感温度が高くなっているため、体が先に負けてしまいます。
また、節約のつもりでこまめにエアコンの入り切りをすると時間帯によっては余計に電気代はかかりますし、1台のエアコンを強冷房にして長時間運転しても電気代はかかります。
通常、エアコンが最も多く電力を消費するのは、外気温と設定温度の差が大きい運転開始直後です。
自転車を運転する際、こぎ始めに大きな力を使うのと同じようなイメージです。
エフ・ベースも力を入れている、建物における断熱ですが、性能の高い家では外の暑さの影響を受けにくいため、エアコンの設定温度を必要以上に低くしなくては涼しくならない、ということはありません。
少しのエネルギーで十分に効くので、気にするほど電気代もあがることはないでしょう。
さらに保冷力があれば、複数台のエアコンを弱冷房で28℃に設定し、24時間運転してもかえってエネルギーの消費が少なく、1日中快適な室温を保つことができるのです。
また、エアコンと扇風機を併用し体に気流を当てると、体感温度が1~3℃下がり、より快適に過ごせます。
外から日射をカットする
真夏は日が高いので、南向きの窓からは、あまり直接の日射は入ってきません。
むしろ西向きや東向きの窓の方が、夏場は日差しが多く入ってきます。
特に気温が上がった午後に日があたる西向きの窓は要注意です。
西向きの高さ2メートルのガラスの掃出し窓があると、午後3時から4時ころでは1000Wのストーブ2つが窓の外にあるような感じになります。
何もしないと部屋の中が相当暑くなりそうです。
対策としては昼間だと、カーテンやブラインドを閉めるということが考えられます。
ただ、日射の遮り方で効果が違ってきます。
同じブラインドでも、窓の内側で遮った場合は、熱の51%、つまり半分は室内に入ってきてしまいます。
ブラインドと窓ガラスの間の熱などが部屋に入ってくるからです。
これに対して窓の外で遮ると、18%ほどになります。遮る場所によって、大きく違うのです。
すだれ・よしず・シェードや、キュウリやへちま、ゴーヤなどのつる植物のグリーンカーテンで窓の外から日射をカットすると景観もよく涼しげに感じるでしょう。
建築的には、軒や庇を設置して直接日差しを遮る工夫ができます。
古き良き日本家屋の縁側の軒や庇がそれに該当します。
夏の「エアコンあるある」と温度と湿度
夏の暑い日にエアコンの設定温度で次のような会話をしたことはありませんか?
「寒いから設定温度あげて」「えーっ!まだまだ暑いよ」
女性は冷房で体が冷えてしまっているのに、男性はまだまだ快適な温度と感じていない状況は「夏のあるある」ですね。
一般的に男性は暑がり、女性は寒がりだといわれ、暑い暑いと言っている男性の横で、女性はストールやカーディガンで体温調整をしている光景はオフィスやレストランでも見受けられます。
こればっかりは高断熱にしただけでは解決できません。
男女で3~5℃の体感温度差があると考えられており、それは筋肉量や平均体温の違いから生じるものです。
性別以外にも、体を動かしているときと、リラックスするとき、外から帰ってきたばかりのときなど、その状況によっても温度の感じ方は違います。
相手の過ごしやすさを尊重しながら、扇風機を使ったり、着衣を調整したりして心地よい温度を保ちましょう。
ちなみに、温度と湿度には切っても切れない深い関係があります。
湿度が10%違うと、体感温度は2℃違うと言われています。
同じ28℃でも、湿度60%と80%なら、体感温度は4℃も違います。
これは、湿度が高いと汗が蒸発しにくいのが原因です。
水は蒸発して気体になるとき、周囲の熱を奪います(気化熱)。
汗で涼しくなるのも、汗が乾いた時に体の熱を奪ってくれるからなのです。
しかし、梅雨時の洗濯物が乾きにくいのと同じで、湿度が高いと汗が乾きにくく、熱を奪ってくれません。
人が快適に感じる湿度は40%から60%と言われています。
冬場は湿度が高くなると暖かく感じますが、夏場は室温をある程度高めに設定しても、湿度を下げることで涼しく感じるのです。
温度だけでなく、湿度にも気をつけましょう。